2023年1月30日、
冬至から3番目、
冬としては6番目の最後の節気「大寒」の
末候「鶏始乳 (にわとりはじめてにゅうす)」になりました。
「にわとりはじめてとやにつく」とも読みます。
24個の節気の中の3番目「大寒」
72個の候の中の9番目「鶏始乳」
※こちらの何番目という順序は古来の正月「冬至」を起点に考えております。
ご了承くださいませ。
「鶏始乳 (にわとりはじめてにゅうす)」
鶏始乳とは、
鶏が卵を産むために準備に入るということを指します。
「乳す」というのは、
母親が子供を抱いて授乳させる姿から来た象形文字です。
なりたちを見ると、
なるほど子供をヨシヨシしながら乳を与える母に見えます。
もちろん、鶏は卵を産みますので、
ヒヨコに授乳することはありません。
しかしながら、
本来の自分の身体への栄養を、
未来の卵の為に転換していくと言うのは、
子供に授乳するのと何ら変わりないのです。
その親鳥の栄養転換の時期が、
鶏始乳(にわとりはじめてにゅうす)になります。
季節感の喪失
今では毎日卵を食べる機会に恵まれている私たちには、
鶏の卵に季節感を感じることはとても難しことです。
しかし、ほんの70年ほど前まで、
家で飼っている鶏が卵を産む季節は2月から4月でした。
大体「馬」の出産と同じ期間にあたります。
それが養鶏技術の向上によって、
春夏秋冬新鮮な卵が当たり前となりました。
一年中季節感のない飼育状況、
餌の栄養向上で年中卵を産む鶏が人工的に作られたのです。
その為、私たちには鶏が他の動物と同じように、
春が誕生の季節だと言う事を忘れさせてしまう結果となりました。
鶏は馬や牛など大型の家畜とは違い、
どの家庭でも買いやすい家畜でした。
実際、昭和40年代には、
田舎に行くと鶏、ヤギは馬や牛と違って、
飼っていた家庭が多かった記憶があります。
そのせいで、
鶏の習性は私たちへの身近なメッセージだったのです。
鶏は日々の時を知らせてくれる貴重な存在
鶏は呼んで字のごとく
「庭」にいる「鳥」です。
名前からの当たり前のように家庭で飼われていたことが伺えます。
鶏はとても実益の高い家畜でした。
それは毎朝、日の出前に夜明けを知らせてくれるのです。
農業が盛んになった頃、弥生時代には中国から伝来し、
骨や時代は不明の埴輪などもあるようです。
江戸時代には、
丑の時、午前2時ごろに鳴く鶏を一番鶏と言って、
とても貴重だったそうです。
そして寅の時、午前4時ごろに鳴く鳥を二番鶏と言って、
こちらは普通の鶏として扱ったようです。
これら鶏の鳴き声が目覚まし時計代わりに、
女性の朝ごはんの準備、
男性の朝飯前の仕事の合図になったのでしょう。
時計のない時代、
毎日の夜明けを教えてくれ、
また毎年の冬の終わりを教えてくれた鶏。
七十二候に登場するのは当然と言えそうです。
金の卵を育む
その一般的に馴染みのあった鶏が
産卵の為の準備に入る。
それは鶏を通じて、
自分たちの余力を次の世代の可能性に繋げていくメッセージと受け取れます。
つまり、長かった冬を無事越すことが出来た。
そして、これから徐々に暖かくなる。
さぁ、これから春を謳歌するぞ!
ではなく、
これから活動しやすくなっていく中で、
「さぁ、1日のうち数十分でも未来の可能性の為に頑張ろう!」
だと思うのです。
自分の元気の幾らかでも、
未来の可能性に費やす。
それは子供たちやパートナーに対してでも良いですし、
健康のための運動でも良いかと思うのです。
全部を今の自分の為、という短絡的な考えでなく、
これまで長かった冬の反省を踏まえて、
今年一年自分育ての卵の為に、
とやに入る。
大寒最後の決意の為に、
自然養鶏の鶏をどこかに観察しに行きたくなりました。
あと、しばらく聞いていない
雄鶏の力強い鳴き声を聞きたいなぁ、、、、
次回は2023年2月4日 11時43分、
「立春」に入ります。
初候「東風解凍 (とうふうこおりをとく)」です。