2023年5月21日16時9分 、
夏2番目の節気「小満」の
初候 「蚕起食桑(かいこおこってくわをくらう)」になりました。
24個の節気の中の11番目「小満」
72個の候の中の31番目 蚕起食桑(かいこおこってくわをくらう)
※こちらの何番目という順序は古来の正月「冬至」を起点に考えております。
ご了承くださいませ。
小満
小満とは、
緑濃き五月も下旬にかかる頃、
太陽は熱く、大地は生命を満たしゆく。
万物がほぼ満たされてきているが、
まだ少し不足した状態、「小さな満足」を意味するとも言われています。
万物の生命の息吹に溢れ、
しかし、なおすべてがまだ生長の可能性に満ちている。
この高揚感こそ、喜びの源。
鳥々は歌い、虫たちが踊り、私たちの心もまた讃歌する。
全てが満たされた状態は、
下落の始まりと分かってのことか、
「大満」はなく「小満」にこそロマンを感じているのか、
この節気に侘び寂びの愛おしさが染み入ってきます。
この時期、
稲は田んぼで青々と育ち、
果樹たちは実をつけ始め、
これから彼ら希望に胸を膨らませてくださいと言わんばかり。
小満は、静かな喜びと深い感謝の季節。
自然の恵みに「ありがとう」
生命の奇跡に「素晴らしい」
声に出して言いたくなりますね。
蚕起食桑(かいこおこってくわをくらう)
蚕起食桑、
その名の如く、蚕が卵から還り桑の葉を食べる頃、
五月下旬、初夏の息吹とともにやってくる、小さな奇跡の瞬間。
蚕が微睡みから目覚めて、
桑の葉の上でその後の繭紡ぎの旅がゆっくりと始まります。
蚕は桑の葉を一葉一葉食み、静かに、確実に成長していく。
生まれたては黒い蚕は約4日後の脱皮から、
白い姿に変身します。
その白い姿で緑の桑の葉を体内で糸に変え、
繭を作ります。
糸は細く、長く、強く、美しく、
穏やかな時間と命の結晶なのです。
絹
ところで、
この蚕の糸を製品化したのが「絹」です。
中国の伝説によれば、
黄時代の皇后が蚕の強い糸を茶会で発見し、
蚕の養殖を始めて製品化したと言われています。
それが確かは分かりませんが、
絹が中国の発明品であったことは間違いないようです。
そして、蚕が養殖の先駆け的存在であった事も驚きです。
七十二候には、
人類がお世話になってきた動植物がたくさん登場します。
この蚕もそうですね。
ただ、この蚕は
実際に見るとなると、
現在では随分難しいようです。
また、絹にしても、
色んな繊維が登場し、
当たり前だった絹の製品も昔に比べると少なくなったように思います。
しかし、
蚕は数千年もの間、
美しい絹を私たちに提供してくれたのは間違いありません。
この時期、悠久のときを経て、
紡いできた蚕の糸を思い出しながら、
私たちもゆっくり時を紡ぐ大切さを噛み締めたいですね。
次回は2023年5月26日、
夏2番目の節気「小満」の
次候 紅花栄 (こうかさかう)」です。