自分育て

「梅子黄(うめのみきなり)」#49

2023年6月16日 、
夏3番目の節気「芒種」の
末候 「梅子黄(うめのみきなり)」になりました。
(うめのみきばむ)とも読みます。

二十四節気の中の12番目「芒種」
七十二候の中の36番目「梅子黄(うめのみきなり)」

※こちらの何番目という順序は古来の正月「冬至」を起点に考えております。
ご了承くださいませ。

「梅子黄(うめのみきなり)」

梅子黄とは、
いよいよ真夏に向かって節目となる直前。
ちょうどこの時期、
梅の実が黄色く熟し始めます。

梅の実の色が変わり始める雨という事で、
「梅雨」というとも言われています。

梅雨の本格的な雨はもう少し先ですが、
湿度の高い風に乗って、
梅の甘酸っぱい香りが広がる時期です。

梅と日本人

梅は紀元前(弥生時代)に中国から伝来したと言われています。
奈良時代には庭木として、
江戸時代には梅の実採取の為に栽培されていたようです。

このように日本人と梅との関係は、
古代から続く深い気づきを持つものであり、
日本の四季折々の風景や生活習慣に大きな影響を与えています。

現代では花見といえば、「桜」を真っ先に連想しますが、
実際「桜」が主役となるのは江戸時代からで、
それまでは花見といえば「梅」が主役だったと言います。

まだ寒い初春に咲く梅の花は、
「耐え忍びながらも咲く」という梅の姿が、
日本人の精神性と重なるという事で愛され、
歌として詠まれ、絵の主題としても多く取り上げられてきました。
日本人の精神性、感性を育てたと言えます。

食文化の中でも、
梅は特に重要な役割を果たしています。
初夏の風物詩として「梅子黄」で七十二候に登場し、
その後、私たちの食生活に欠かせない「梅干し」になります。
梅干しは、その酸味が特徴で、
おにぎりやお弁当などに欠かせない存在です。
汗をかくこの時期、
梅の酸味は塩分補給になり、
同時に傷みやすい飯を保存してくれるというスーパー食材です。

梅干しからタネを除いた梅肉は、
料理の隠し味や調味料として使われ、
夏の味覚、「きゅうりや鱧」との相性は絶妙です。

その他、甘さと酸味が絶妙に調和した梅酒も忘れてはなりません。
梅酒は薄めて飲むことで、
お酒が苦手な人でも食前酒として、
またリラクゼーションやおもてなしの場でも愛される一品です。

松竹梅

日本の文化に、松竹梅という吉祥シンボルがあります。
元々は中国から伝わった「歳寒三友」がオリジナルだと言われています。

「歳寒三友」とは、
中国の古代文人たちが冬季でも緑を保つ植物、「松、竹、梅」の生命力を讃え、
理想の生き方の象徴とされました。

  1. 松: 松は常緑樹であり、厳しい冬の寒さにも耐え抜き、四季無視緑色の葉の色から、
    不屈の精神や長寿を象徴。
  2. 竹: 竹はしなやかで強く、風に吹かれても折れず、その為、柔軟性を表します。
    また、真っ直ぐに急速に成長する竹の性質は、進歩と成長を象徴するともされます。
    素直で気風の良さから「竹を割ったよう」という比喩も生まれました。
  3. 梅: 梅は春が来る前の寒さがまだ厳しい時期に花が咲くから、耐久力と希望、また新しい始まりの象徴となります。

このように歳寒三友は重要な象徴であり、
詩や絵画、庭園芸術など、様々な芸術表現の中で用いられてきました。
そして、本来は等級は存在せず、
「松竹梅」は横並びでそれぞれ違った生き方の理想像なのです。

しかし、日本では江戸時代の頃から、
「縁起物」としての意味合いが強くなり、
慶事、引き出物の等級としての「松竹梅」となっていきました。
従って「梅」は決して縁起物の中での最下級ではないのです。

梅は花としても「桜」に咲きを越され
縁起物としても「松」や「竹」のしたと見られ、
食材としても、調味料として脇役として見られ、
しかし、陰で色んな面で支えてくれています。
まさにこれこそが私たちが見習うべき梅の生き様かもしれません。

梅は食文化、美意識、精神性など、
多くの面で日本人に影響を与えてきました。
この時期、梅の実の黄色く色変わりする姿を見て、
梅の精神性を心に刻みたいと思います。

次回は2023年6月21日 23時58分、
夏4番目の節気「夏至」に入ります。
初候、「乃東枯(ないとうかるる)」です。