自分育て

「禾乃登 (こくものすなわちみのる)」#64

2023年9月3日 、
秋2番目の節気「処暑」の
末候「禾乃登 (こくものすなわちみのる)」になりました。

24個の節気の中の17番目「立秋」
72個の候の中の51番目「禾乃登 (こくものすなわちみのる)」

※こちらの何番目という順序は古来の正月「冬至」を起点に考えております。
ご了承くださいませ。

「禾乃登 (こくものすなわちみのる)」

「禾」という文字は、
稲を代表する穀物の実った姿を模った文字です。
「木」という字に「ノ」という字が上に乗り、
まるで稲穂が首を垂れるような漢字です。

この時期になると、
田畑には実った稲穂や他の穀物が見られ、
農家の人々のその年の努力の成果を手にする時期でもあります。

「実り」という観点で考えると、
この時期、
穀物だけに限らず、その他の作物、
そして魚なども収穫量が増えます。
あらゆる生命が繁茂し、
熟成していく大自然全体の様子を表しているのが
「禾乃登 (こくものすなわちみのる)」です。

実り

「禾乃登」はただ実りがあって収穫するという行為だけでなく、
大自然への感謝、仲間との共有、
そしてこれから気を引き締めて準備するといった多くの意味が込められています。

穀物の実りはその象徴です。
そう考えると、
私たち個々が培った今年一年の努力が形を成したものは何だったのか?
改めて見つめ直す時期でもあります。
そして、その成果を家族や地域社会と共有することで、
新たなサイクルへと向かう希望と期待が生まれます。

私たちがあらゆる命のお世話になっていると考え、
それに対して誰かに喜んでいただける存在を目指すとするならば、
「禾乃登」は穀物が豊かに実るこの時期を象徴しているだけでなく、
私たち個々も努力と協力を通じて何らかの成果を得、
それを分かち合う喜びを感じる季節でもあるのです。

それは自然のサイクルと私たちの生き方が
シンクロしている素晴らしさを教えてくれる時期とも言えます。

詰め

さて、日本では稲穂が実るこの時期に台風シーズンが重なります。
台風は稲や他の農作物に大きな被害をもたらす可能性があり、
その為、農家は非常に緊張する時期でもあります。

それ以外にも、リンゴや梨が収穫直前に全滅という悲しいニュースを
数年に一回聞くこともあります。
また、農家だけでなく、
海の実りを請け負う漁業にも被害が出ることもあります。

台風が近づくと、
様々な分野で防災対策がなされます。
農家は風で倒れることを防ぐために稲を支える作業や、
水田の水位調整など、さまざまな対策を講じます。
その他にも、果樹に対する風よけの設置や野菜の収穫のタイミングを調整するなど、
予防と対策が求められます。

ただ、このような対策をしても、
時に大自然の猛威に、なすすべないことも事実としてあります。

「実りの時期」と「台風シーズン」が重なることは、
人生の縮図と言えるかもしれません。

多くの人が何かを成し遂げようと努力し、
その成果が目の前にあるときに
突如として困難や障害が立ちはだかる場面は、人生においてもよくあります。

このような時、準備と対策がどれほど重要かが痛感されます。
成功や成果が目前に見えたとしても、
過信せず、慎重に次のステップを計画する必要があります。
人生もまた、一度の成功や失敗が全てではなく、
その後どう対処し、どう立ち直るかが大事なのです。

人々にとって自然災害は無くなってほしいものですが、
台風のような困難があるからこそ、
その後の晴れた日々、
収穫の喜びがより一層感じられるのです。
同じように、人生においても困難を乗り越えた先にある達成感は、
何ものにも代えがたいものとなります。

この点から考えると、
「禾乃登」の稲穂が垂れ出すこの時期は
自然が教えてくれる「抜かりなく」のメッセージにも感ぜられます。

さて、
タワワに実った稲穂の姿を見ながら、
私の今年の実りは何だったのか?
また、収穫の準備、防災を怠らないよう考えたいと思います。

次回は2023年9月8日 6時27分、
夏3番目の節気「白露」に入ります。
初候、「草露白 (くさのつゆしろし)」です。