エルトンとバーニーの幼少時代
そして奇跡といえる出会い
売れるまでの道のり
個人的な苦しみ
そして二人の喜び
それらの日々が凝縮されたコンセプトアルバム
表紙のおどろおどろしいイラストは
巨匠 アラン・オルドリッジによるもの。
とにかく素晴らしいの一言
このアルバムの一曲目から最後までを通しで演奏するライブ音源がある
これにもたまげた
通常、エルトンくらいのクラスになれば
ライブで「◯◯ツアー」とアルバム名を掲げても
大概4、5曲演奏すればいいくらいである。
しかも順序もバラバラ
それがアルバムの順番通りに最後まで演奏すると言うのは
このアルバムのコンセプトに芯が通っており
アルバムとして完成度が高かったことが窺える
(但し、出たばっかりのアルバムを順序通り演奏し、
半分くらいの客がバタバタと帰ってしまい、
やるものではないと後にエルトンは語っている。)
またバーニーが先に詩を書いて
そこにエルトンが曲をつけると言う「詩先」と呼ばれる作法が
いかに優れているかも分かる。
もしこれが曲が先だとしたら
作風がバラバラになるであろう
いずれにしてエルトンが全盛期での抜群のタイミングで発表した
この不滅の作品群は
エルトンの体力的にも精神的にも限界だったであろう事も窺え
駆け抜けた日々にお疲れ様と声をかけたくなる
そして、幾多もの夢を与えてくれた、
そして今でも与え続けてくれることに
ただただ感謝
さて、そんなアルバムのトップ
1曲目「Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy」について
レジーとバーニーの幼少時代から始まる詩
二人がどんな子供だったのか、
何に興味を持っていたのか
短い詩の中に詰め込まれた二人が出会うまで
そして、そこからがスタートであったというストーリー
面白いのは
二人に何処にでもいるような子供時代があったと言うこと
そして、もし出会ってなかったら
運命の輪は開かなかったかもしれないということ
その奇跡の出会いを感じ取れる歌
2曲目「Tower of Babel」について
少年時代から青年へ
そして社会へ出ると
トラップのような現実が一杯
弱肉強食の世界だ
キャプテンファンタスティックのアルバムのイラストに出てくる
魑魅魍魎のようなモンスター群
これは現実社会の人間を
あるメガネを通して見た姿
人間のような顔をして過ごしているが
まるで妖怪のような輩がウヨウヨしている
欲と煩悩にまみれたバベルの塔
それがこの世の実態だ
神様なんていやしない
いても救ってくれるなんて無理
現実を見つめろ
そんな風刺の効いた歌
3曲目「Bitter Finger」について
バーニーが詩を書くんだって
そんな簡単じゃないんだよ
そりゃそうだよね、
そうだよ!
誰でも生み出すのは苦しんだ!
そんな産みの苦しみを歌った作品
一番惹かれるのは
「Are you working」というワンフレーズ
ワークというと仕事だが
仕事の概念が私たちとは違う
アーティストにとっての仕事はライフワーク
大物、本物になればなるほど「金を稼ぐためにやってる」のではなく
好きだからやっている訳だ
私たちは「稼ぐ」と「仕事」を混同しているが
生粋のアーティストは人生をかけてやるのが「仕事」
と言う訳で、
「Are you working」(君は大事なことやってる?)
そう問いかけてくれている
僕らは忙しいことを言い訳にして
大事な時間を忙殺している
だけど、道を切り開きたかったら
本当の自分のやりたい事を見つめて
自分を律して行動しないと!
そんなメッセージソング
4曲目「Tell Me When The Whitsle Blows」について
早くチャンスが来ないかな!
俺はいつでも走り出すよ
チャンスという列車がきたら
行き先なんて乗ってからでいい
とにかく、早くここを脱出しなきゃ
焦りと若さを感じる作品
みんな昔はこうだった、
本当ですね〜、、、
いやいや今からですよ!
汽笛が鳴ったら教えて、
「Tell Me When The Whitsle Blows」
5曲目「Someone Saved My Life Tonight」について
もうこの曲は凄くハマりました
10代の頃の自分の夢を諦めないぞ!という気持ちが
「Thanks god my music’s still alive」 というフレーズにマッチし
色んな足枷から自分を解き放ってくれる作品
「free to fly」のくだり
そして、誰とは言えないけれど、
過去の人々への感謝、
そして、もしかしたらこれから出会うかもしれない誰かへの感謝を込めた
何度も何度も繰り返す
「Someone Saved My Life Tonight」のリフレイン
心洗われます
6曲目「Meal Ticket」について
なんだかんだ言っても食うか食われるか
気がついたら、毒を盛られてる
仲間のふりして
優しい声で近づいてきても
気は許すなよ
いつか本気出すから、、、は通用しねえ!
後悔したって遅いぜ
負け犬に同情は要らねえ
エルトンが実力で勝ち上がってきた様子が窺える真のロックンロール
7曲目「Better off Dead」について
善人を守るために法律があるのか
それとも悪人を守るための法律なのか
世の中バカげていることが本当に多い
しかも、何かあったら国家や警察が身の安全を守ってくれると
お人好しほど思ってたりする
おいおい、それって危険だよ
だって裁判官だって
知らない間に恐ろしい判決下してるよ
あんたもそれに加担してるかも、、、?
もし罪深気自分に気づいたんなら
「Better off Dead」
8曲目「Writing」について
二人の共作の日々がとても有意義で
楽しかったんだろうなぁ
そんなシーンが浮かんでくる歌
9曲目「We all Fall in Love Sometimes – Cartains」について
2曲がメドレーになっている大作
胸がいっぱいになりますね
いつまでも若々しく
夢を持って頑張ろう
幸せのタネ可能性のタネを
いつまでも撒き続けよう
そんな気持ちにさせてくれる歌
パワーソングです。
さて、ビルボード史上初めての
初登場一位のアルバム
エルトンが純粋なエルトンを演じるのに疲れ
燃え尽きるようにも感じる
力を出し尽くした感いっぱいの集大成
とにかく凄いの一言です。
何が凄いかというと、
第一に挙げられるのは、
社会風刺のスタンスを外していない事。
これはデビューアルバムの「エンプティスカイ」からブレていないのです。
そして、アルバムに入っている曲の構成も近いものがあって、
最後の作品「Curtains」に見て取れます。
エンプティスカイの最後の曲は「ガリバー」で、
アルバムのすべての曲を最後に断片的に挿入してます。
これは実際に曲が入っているわけですから、
アルバムという一体感を聞き手はすぐに感じ取ることが出来ます。
しかし、それから5年弱でスターダムを上り詰めたエルトンとバーニーは、
そんなわかりやすい表現をしなくても良くなっています。
エンプティスカイではアルバムの作品の一貫性を音楽で示しようと、
曲を断片的挿入しました。
しかし、今度は誰しもがわかる表現方法でなく、
バーニーが詩にさりげなく
ここまでのアルバムを散りばめたのです。
Curtainsの歌詞の中で、
音楽は君そのものだった・・・「your song」
何もない場所でタネを撒こう・・・「Tumbleweed connection」
そろそろ飛んでいくの・・・「Madman Across The Water」
と、直前のアルバム「Caribou」まで、
静かに振り返っているのです。
そこまで思いを込めた作品群
それが「Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy」であり、
アルバムとして初めて発売と同時にビルボード1位となったのでした。