自分育て

「鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)」#55

2023年7月18日 、
夏5番目の節気「小暑」の
末候「鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)」になりました。

24個の節気の中の14番目「小暑」
72個の候の中の42番目「鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)」

※こちらの何番目という順序は古来の正月「冬至」を起点に考えております。
ご了承くださいませ。

鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)

「鷹乃学習」とは、
文字通り「鷹が飛ぶこと、狩をすることを学ぶ」事を意味します。
初夏に生まれた若鷹は巣立つ準備に入ります。

親はまず飛ぶ方法を教え、そして狩の方法を教えます。
これは、成長と独立、そして自然の親子関係を象徴する美しい瞬間であり、
彼らが自然界で生き抜くための命の継承とも言えます。

教育と労働

「鷹乃学習」には、自己成長と生きていく知恵、技の伝承の重要性という
二つの大切なメッセージが込められているのかもしれません。

若鷹が飛ぶ術、狩る術を学ぶという事は、
自己成長と自己啓発の強烈な象徴と言えます。
自分の力を伸ばし、新たなスキルを習得することで、
初めて独立という真の成長を達成することができます。
これは、生涯学習の精神や成長のための持続的な努力の大切さを私たちに教えてくれます。

一方、親鷹の観点から考えると、
子供たちに飛び方を教えることは、知識や経験を次の世代に伝え、
同時に自分たちの子孫を残していく重要性を示しています。

鷹の親から子に技を教えることは私たちにとっては「教育」
そして巣立ちをして生き抜いていく生活は私たちにとっての「労働」
私たちは、義務的に受けてきた「教育」とその後の「労働」について、
もっと大きな意味で「自己成長」と「伝承」そして「生き抜く」事について、
改めて考えなければならないように思います。

世界においては「産業革命以降」
日本においては「明治維新以降」
教育は親から子へではなく、学校組織から児童へとシフトチェンジしていきます。

当時は子供が本を読むということは、
理屈ばかりこねるようになり、家業が疎かになるという事で、
中には学校教育に反対の親もありました。
実際、戦後でも「本を読んだらバカになる」という表現で
子供を学校に行かせない表現の映画も散見されました。

しかし、子供を学校に行かせるという事が親の義務として国に課せられ、
「教育」というものは完全に家庭で行われるものから、
「学校」で受けるものになってしまいました。
家で行われるのは「しつけ」ぐらいになってしまったのです。

学校で教育を受ける、
すなわち生きていく知恵、技を教えてもらうというのは、
その教育の後、就職して定年後まで安定した仕事が得られる時代においては、
有効だったと思われます。
(もちろん今でも有効な就職先はある。)

ただ、定年が55歳か60歳の時代の
教育期間(12年から16年)に対して、労働期間(42年から38年)に対する割合が3倍程度なのに対して、
現在では教育期間(同じく12年から16年)に対して労働期間(72歳まで働いたとして50年から54年)とにかなり長くなってきたように思われます。
確かに周囲を見回しても70歳で完全に隠居の人など少数派なのが現状です。
つまり昔と変わらない教育時間に対して、
10年間もの長い時間を生き抜かねばならないようになったと言えるのです。

その分の長くなった労働期間に対する勉強はどうやって行うのでしょうか?
現状、私たちは自分でこの10年間を穴埋めする学習が必要と言えます。

自己成長と伝承

さて、よく考えると、
私たちの現役世代、
親から教えてもらった飛ぶ技術、狩る技術と言った本来の生き抜くための「実践的技」はほとんどないのではないでしょうか?
冷静に考えて、
「勉強しないと大変な事になる。」など、
ほぼ突き放すような事ばかりだったような気がします。

しかし、親のせいとも言い切れません。
親たちも大きな世界の流れのまま、
抗うことができずに生きてきたのです。
なので親たちもその犠牲者といえます。

私はここで考えるのは、
私たち世代もそれと同じように流れに身を任せ、
次世代を突き放しながら、
しっかり年金を頂くという悪い流れを断ち切らないといけないという事です。

つまり、ここからでも自分で生き抜くための技術を探して習得し、
そして自立し続ける。
その上で、
もしチャンスがあれば、次世代に技を伝承していければと考えています。

試行錯誤

その伝承には、
全てが上手くいった成功例だけではないと思います。
失敗例も含めて、実際にチャレンジしてどうなるかを見せるだけでも良いと思っています。

実際の親鷹も子鷹に教えている時に、
格好良いところばかり見せられる訳ではないでしょう。

技を習う、また教える。
このサイクルはいつまでも続きます。
これで終わりということは無いのです。

次回は2023年7月23日 10時50分、
夏最後の節気「大暑」に入ります。
初候、「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」です。