「インド料理」と一口に言っても、
その広大な土地と文化の多様性を一言で語るのは難しいです。
日本のような、インドのわずか八分の一の面積の国でさえ、
北と南で食文化や習慣に顕著な違いがあります。
では、さまざまな民族が集うインドでは、
どれほどの違いがあるのでしょうか。
食はその地の文化や人々の生活を映し出す鏡のようなもの。
今回は、その豊かな違いを紐解いていきたいと思います。
北インド料理:香り高きスパイスの宝庫
北インドの主菜は、
野菜や肉を使った豊かな味わいが自慢です。
ダル(レンズ豆)と共に、
グレービーソースかドライスタイルで提供されます。
重みがありながらも、その味わいは深く、食欲をそそります。
料理の鍵となるのは「タッカ」。
これはスパイスを油やギー(透明なバター)でじっくりと熱し、
エッセンシャルオイルと風味を引き出すインド伝統の技法です。
コリアンダーやクミン、チリパウダーなど、
さまざまな粉末スパイスがこれに続きます。
この複雑な味わいの層が、パンやご飯と共に楽しめるのが北インド料理の魅力。
豊かな香りと味わいが、食卓を彩ります。
南インド料理:軽やかでヘルシー、米の優雅な世界
一方、南インドの料理は米を主役にした、
軽やかで胃に優しいメニューが中心です。
3〜4種類の異なるレンズ豆の種類と、
健康的な量のカード(ヨーグルト)を添えたご飯が基本。
地域やコミュニティによっては、特別な機会に肉や魚が登場することも。
しかし、日常の食卓では、
ドーサやイドゥリのような米粉を使った軽食や朝食が人気です。
これらは軽やかでありながら、
深い満足感を与えてくれる南インドならではの味。
穏やかな米の風味が、食事を心地よいものにしてくれます。
パールシーとイラーニー:ペルシャの風を感じる味わい
約1000~1200年前、
迫害を避けるためにペルシャ(現イラン)からインドに移住した
小さな共同体のパールシーとイラーニー。
彼らの料理は、インドのそれとは一線を画し、
どちらかといえば東洋料理のカテゴリーに属します。
米、鶏肉、羊肉、ドライフルーツ、ナッツ、ハーブ、
そしてサフランやシナモンなどのハーブやスパイスが特徴です。
この独特な味わいは、ムンバイやグジャラートで特に楽しむことができます。
ムスリムやムガール
インドでは菜食主義者が多い中、
ムスリム(イスラム教徒)とムガールはインドでは肉食の人々に当たります。
そのため、ベジタリアン以外のカレーの専門家でもあり、
バーベキューやビリヤニも得意とします。
またキール(米のプディング)のような甘いものも、
ムスリムに由来しています。
インドに行ったなら、タンドーリチキンやケバブは押さえておきたい料理です。
この料理はムガル帝国に由来する「ムガル料理」と呼ばれますが、
ムガールはモンゴル帝国から進出してきた民族に由来します。
その為、伝統的肉料理があるのです。
その他、地域別の料理
インドの地域ごとにユニークな料理文化を手短にご紹介します。
- グジャラート・・・ベジタリアン。辛さ控えめで甘みがある。ミルク製品が豊富。
- コンカニ、ゴア、ケララ・・・魚とココナッツが豊富。インドの中でも辛くて米も多用。
- ウドゥピ・・・ベジタリアン中心。ドーサや米。玉ねぎとにんにく不使用。
スパイスとトマトをふんだんに使用。バナナの葉で提供されることも。 - パンジャーブ・・・ジューシーでリッチ。
肉、ギー、オイル、タンドーリ料理が特徴。 - ベンガル・・・ 魚、とにかく魚!時折肉。
米、ミルクで作られた多くのスイーツも。
次回はもっと詳細なインド料理の違いについての紹介です。