観察日記

南北インド料理、民族による違いについて Part5

「インド料理」と一口に言っても、
その広大な土地と文化の多様性を一言で語るのは難しいです。

日本のような、インドのわずか八分の一の面積の国でさえ、
北と南で食文化や習慣に顕著な違いがあります。

では、さまざまな民族が集うインドでは、
どれほどの違いがあるのでしょうか。

食はその地の文化や人々の生活を映し出す鏡のようなもの。
今回は、その豊かな違いを紐解いていきたいと思います。

北インド料理:香り高きスパイスの宝庫

北インドの主菜は、
野菜や肉を使った豊かな味わいが自慢です。
ダル(レンズ豆)と共に、
グレービーソースかドライスタイルで提供されます。
重みがありながらも、その味わいは深く、食欲をそそります。

料理の鍵となるのは「タッカ」。
これはスパイスを油やギー(透明なバター)でじっくりと熱し、
エッセンシャルオイルと風味を引き出すインド伝統の技法です。

コリアンダーやクミン、チリパウダーなど、
さまざまな粉末スパイスがこれに続きます。
この複雑な味わいの層が、パンやご飯と共に楽しめるのが北インド料理の魅力。
豊かな香りと味わいが、食卓を彩ります。

南インド料理:軽やかでヘルシー、米の優雅な世界

一方、南インドの料理は米を主役にした、
軽やかで胃に優しいメニューが中心です。

3〜4種類の異なるレンズ豆の種類と、
健康的な量のカード(ヨーグルト)を添えたご飯が基本。
地域やコミュニティによっては、特別な機会に肉や魚が登場することも。

しかし、日常の食卓では、
ドーサやイドゥリのような米粉を使った軽食や朝食が人気です。
これらは軽やかでありながら、
深い満足感を与えてくれる南インドならではの味。
穏やかな米の風味が、食事を心地よいものにしてくれます。

パールシーとイラーニー:ペルシャの風を感じる味わい

約1000~1200年前、
迫害を避けるためにペルシャ(現イラン)からインドに移住した
小さな共同体のパールシーとイラーニー。
彼らの料理は、インドのそれとは一線を画し、
どちらかといえば東洋料理のカテゴリーに属します。

米、鶏肉、羊肉、ドライフルーツ、ナッツ、ハーブ、
そしてサフランやシナモンなどのハーブやスパイスが特徴です。
この独特な味わいは、ムンバイやグジャラートで特に楽しむことができます。

ムスリムやムガール

インドでは菜食主義者が多い中、
ムスリム(イスラム教徒)とムガールはインドでは肉食の人々に当たります。
そのため、ベジタリアン以外のカレーの専門家でもあり、
バーベキューやビリヤニも得意とします。

またキール(米のプディング)のような甘いものも、
ムスリムに由来しています。

インドに行ったなら、タンドーリチキンやケバブは押さえておきたい料理です。
この料理はムガル帝国に由来する「ムガル料理」と呼ばれますが、
ムガールはモンゴル帝国から進出してきた民族に由来します。
その為、伝統的肉料理があるのです。

その他、地域別の料理

インドの地域ごとにユニークな料理文化を手短にご紹介します。

  1. グジャラート・・・ベジタリアン。辛さ控えめで甘みがある。ミルク製品が豊富。
  2. コンカニ、ゴア、ケララ・・・魚とココナッツが豊富。インドの中でも辛くて米も多用。
  3. ウドゥピ・・・ベジタリアン中心。ドーサや米。玉ねぎとにんにく不使用。
    スパイスとトマトをふんだんに使用。バナナの葉で提供されることも。
  4. パンジャーブ・・・ジューシーでリッチ。
    肉、ギー、オイル、タンドーリ料理が特徴。
  5. ベンガル・・・ 魚、とにかく魚!時折肉。
    米、ミルクで作られた多くのスイーツも。

次回はもっと詳細なインド料理の違いについての紹介です。