人生の重々しい葛藤から
誰にでもある青春の切なき想い
曲調もポップな路線になった一枚
5曲目の「ティーンエージャーのアイドル」そのまんまのように
チャートを席巻するのを意識して作られた様に感じる
これまでの玄人好みの作風から一変し、
実際に若い世代に一気に火がつく訳だ
恐らく現在の世間のエルトン・ジョンの大方のイメージは
この作品から以降のものだ
前作まで使われていたオーケストラやゴスペル調のコーラスなどもなくなり
軽音と呼ばれるようなバンド風に変わっている
アルバム名の「ピアニストを撃つな!」というのは
西部開拓時代の
色々揉め事があっても
酒場が盛り上がらなくなるから「ピアニストだけは殺さないでね」という逸話から
これをもとにフランソワ・トリュフォーが
「ピアニストを撃て!」という題名の映画を撮った
その為、この映画からアルバム名を拝借したように思われている感がある
しかし、そんなに単純でもないようだ
というのも、
バーニートーピンが西部開拓時代にとても憧れていた事は
これまでの作品で十分伺える。
バーニーは映画の「ピアニストを撃て!」を模した訳でなく
本来の「ピアニストを撃つな!」に戻したのである。
こいつ(エルトン)を撃ち殺したら面白くなくなるぜ!
と、いう訳だ。
実際、映画「ピアニストを撃て!」は
1950年台の「パルプフィクション」という雑誌の小説が原作で
その中に登場する、とあるピアニストがギャング抗争に巻き込まれていき、
ギャングに追われる身となって「ピアニストを撃て!」となる訳だ。
この原作のパルプフィクションは
1994年にクエンティン・タランティーノ監督により
リメイクされ話題となった。
「パルプ・フィクション」はパルプ「雑誌」・フィクション「作り話」で
いわゆるタブロイド紙の一面記事のようなバカバカしい話という意味で
そんな訳あるわけないだろ!
というようなフィクション作品を指す。
このひょんなことから命を狙われるお話は色んな作品に受け継がれ
邦画の「探偵物語」は「ピアニストを撃て!」と酷似している。
横道から逸れたついでに、
映画「ピアニストを撃て!」に出演している女優のマリー・デュボワ、
これが滅茶苦茶美しい!
少し年は離れているがオードリーヘップバーンが妖精的な感じに対し、
とても健康的な雰囲気でいい!
さて、
その「パルプ・フィクション」=「作り話の寄せ集め的な世界観」
から飛び出た映画「ピアニストを撃て!」があってからの〜!
エルトンのアルバム「ピアニストを撃つな!俺はただのピアノプレイヤーさ、、、」
バーニーとエルトンは共に映画好きで
バーニーは特に小説も沢山読んでいる。
これまでも多くの映画や小説からインスパイヤされた作品があったように
彼らは単に音楽というより
音楽映画、つまり映像が出てくるような音楽、
読み語りの音楽、
朗読のような音楽、
これが根底にあったように感じる
本アルバムはその音楽映画をしかと意識しているので、
ジャケットからして(映画館に入っていく男女)の写真となっている。
つまりはエルトンの世界に入っていって浸る作品群なのだ!
1曲目の「Daniel」について
ベトナム戦争へ旅立つ兄
待つ弟、
戦争でお兄さんが兵隊として行ってしまうシーンから歌は始まる
ここでは細かいことはさておき、
深い兄弟愛が描かれている
ダニエルのもっと詳しい内容が知りたい方は下記のあわせて読みたいをどうぞ!
2曲目「Teacher I Need You」について
一変して明るい学園生活の歌
この軽快さと楽しそうな雰囲気はエルトンならでは!
まさに青春って感じがします。
初恋が描かれてます
3曲目「Elderberry Wine」について
弾むピアノと激しいボーカル
しかし、亡くなった妻との思い出の歌
先に天国へと旅立ってしまった妻との愛の深さが描かれてます
近所の箕面の山登りに行くと
時折見られる「ニワトコの木」
その木を見ると
この曲が頭の中で鳴り出して
切なく不思議な気持ちになります。
4曲目「Blues for My Baby and Me」について
これも映像が出てくる曲
昔と現在が走馬灯のように駆け巡る
こういう恋愛を全うできる二人って、
最高に幸せなのだろう
バーニーの若き日の理想だと思うのだが、
それにしても素晴らしい
純愛が描かれてます
5曲目「Midnight Creeper」について
これまた一転、
まさにタブロイド紙のゲスな記事のような内容
でも面白いし人間味溢れる歌
俺って、こんな感じになってないかな?
と身につまされる感もあります。
自分と客観的に見る自分が描かれていて面白い
6曲目「Have Mercy on the Criminal」について
日本は誰かを攻撃しだすと
コテンパンになるまで叩き潰すちょっと怖い国民性があるように思う
それは形式を重んじるイギリス文化も同じ
この歌はまさにそんなイギリス、日本の国民性に一石を投じるような内容
罪を憎んで人を憎まず
7曲目「I’m Going to Be a Teenage Idol」について
エルトンのこれまでのオーケストラ、
クラシカル路線からアイドル路線に変更という感じの
アイドル宣言にも聞こえる内容
本来なら軽快なサウンドにしそうな歌詞だが、
俺はマジだぜ!という
パンチの効いた曲調になっている
自分と目標とが描かれてます。
「And root-toot-shoot myself to fame」の
And root-toot-shootの部分は聴いていて気持ちいいんですよね
まさにエルトンとバーニーのrhyme
8曲目「Texan Love Song」について
テキサス愛に満ち溢れた歌
今のアメリカ大統領「トランプ支持者」を垣間見るような歌詞
アルバム「Tumbleweed Connection」に通ずる作品で何ともホッとする作品
自分と国への愛が描かれてます
9曲目「Crocodile Rock」について
歌詞をしっかり把握して聞くと
本当にいい曲だわ
青春時代の想い出への愛が描かれてます
10曲目「High-Flying Bird」について
アルバム最期を飾る歌
悲しい事だけれど
人生必ず別れが来る
辛い辛いいつまでも引きずる破れた恋
さて、アルバムの内容は密接な愛がテーマ
エルトンジョンのこれまでの作品から考えると
取っつきやすいというか
とても分かり易い世界観が描かれてます。
音楽も軽快ですが
内容は決して軽くはありません。
音楽のような映画として、
想像しながら聞いて頂きたいアルバムです