ジャイプールとは? 世界中の石が集まる街

ジャイプールは、インドの宝石産業の中心地として知られ、世界中の天然石がここに集まります。インドでは、古くから天然石が絵の具、装飾品、薬など多様な用途で使われており、天然石文化が根付いていました。
大航海時代を経て、海を越えて宝石が流通するようになると、ジャイプールにはますます多くの天然石が集まるようになります。なぜこの街が世界有数の宝石市場となったのか。
その理由を紐解いていきましょう。
ジャイプールに天然石が集まる理由

- 石の加工文化が根付いている
インドでは、古代から天然石の加工技術が発展しており、職人たちが高い技術を持っています。 - 高度な加工技術
繊細なカッティングや研磨技術が受け継がれており、宝飾品に仕上げる職人技が際立っています。 - 加工コストが安い
低コストで高度な加工が可能なため、多くのバイヤーがここでの加工を選びます。
この流れは、ムガール帝国時代に確立され、現在も続いています。
ジャイプールとムガール帝国:宝石のモンドセレクション

ムガール帝国時代、ジャイプールの王は毎年、世界中から採掘された最高級の宝石を買い集め、「世界一の宝石」を決めていました。この影響で、世界の希少な宝石のデビューはまずジャイプールで行われるようになりました。
例えば、今では成分分析で分類できる宝石も、当時は色や反射の違いで別の名前がつけられていました。見たことのない宝石を発見した採掘者は、高値で買ってくれるジャイプール王へ持ち込んだのです。
この伝統は現在も続き、ダイヤモンド市場の流通価格を決定するほどの影響力を持っています。そのため、ジャイプールは「石の街」として特異な役割を担っています。
それでは、実際にどのように宝石が加工されるのか、詳しく見ていきましょう。
ジャイプールの石加工:職人の世界
路地に広がる工房街

ジャイプールの街には、至る所で石を加工する職人たちがいます。日本の工場のように一つの会社がライン作業をするのではなく、それぞれの職人が独立した事業主として作業を請け負っています。専門技術を活かし、個々の職人が黙々と石を磨いている光景は圧巻です。
宝石加工の3つの工程
1. カッティング(原石の切り出し)

最初の工程は、原石を適切なサイズにカットすることです。大きな原石をグラインダーで薄い板状に切り出し、2〜3センチ程度の大きさに整えます。これにより、加工しやすい形状になります。
2. シェイピング(形を整える)

カットされた石の角を取り、ジュエリーとして使いやすい形に成形します。カボションやファセットカット、長方形など、最終的な用途に応じたシェイプを作ります。
3. ポリッシング(研磨)

シェイピング後の石はまだゴツゴツしており、光沢がありません。金属製の回転盤にコンパウンドを塗布しながら、徐々に細かい研磨を行います。
特筆すべきは最終仕上げです。最も細かい研磨には高速回転する羊の革を使用し、驚くほどの光沢を生み出します。もはや研磨というより、磨き上げる作業と言えるでしょう。
また、宝石の種類によって硬度が異なるため、工程は微妙に変化します。
例えば、ルビーやサファイアのような硬い石は時間がかかり、より細かい工程を経て仕上げられます。
宝石が市場に出回るまで
加工者 → ブローカー → バイヤーの流れ

- 加工者
- 加工を請け負い、仕上げた天然石を市場に出す準備をする。
- ブローカー
- バイヤーとの交渉を担当し、価格の安定を図る。
- 代々続く家業として、多くの加工者とバイヤーをつなぐ重要な役割を担う。
- バイヤー
- 海外から買い付けに来る業者(私のような人間)。
- 取引の規模が小さいと、ブローカーは取り合ってくれないこともある。
- 繰り返し取引を重ねることで、優良な石を優先的に仕入れることができる。
こうした流れを経て、私の手元に届いた天然石は、皆さんのもとへと届けられるのです。
まとめ:天然石の旅路を知ることで、より愛着が湧く

今回、ジャイプールの歴史や加工工程、流通の仕組みを紹介しました。この地で研磨され、流通することで、世界中のジュエリーやアクセサリーへと生まれ変わっていきます。
知ることで、皆さんの手元に届く石がどれほどの旅を経てきたのか、
より深い愛着を感じてもらえるはずです。
それではまた!