24個の節気の中の20番目「寒露」大体10月8日〜23日
72個の候の中の60番目「蟋蟀在戸 (きりぎりすとにあり)」10月19日〜23日
「蟋蟀在戸 (きりぎりすとにあり)」
秋も終盤、
昼間の騒々しさが落ち着く、
静寂が広がる夜、
その深まりとともにひときわ聞こえてくるのは、蟋蟀(きりぎりす)の声。
(きりぎりすとありますが、コオロギの事を指しています。)
侘び寂びを音で表現したようなコオロギの声、
秋の風情を一層深めてくれます。
それはまるで、過ぎ去った暑い日々の名残を訴えるかのように、
寂しげでありながらも懐かしい響きを持っています。
古くから日本の詩や文学には、虫の声が詠まれてきました。
その声は、人々に季節の移り変わりと、
それとともに変わっていく人々の心情を伝え、
深い共感を呼び起こしてきました。
虫の声
二十四節気七十二候に登場する動植物、そして自然現象は
誰もが感じるものではなく、
意識していないと分からないものが多くあります。
例えば、虫の声も海外の方には、
声として聞くことはできず、
ただのノイズの一種としてしか感じられないようです。
そして、
この感覚は磨かないと昨今の日本人でさえも
単なる音として処理されているように思います。
音だけではありません、
花の香り、
風の生ぬるさ、
様々な刺激を五感で事細かに感じるのが、
自然と調和するということなのです。
そして、
この自然との調和の瞬間、
私たちは一瞬にして、
遠い過去の記憶に触れたり、
数ヶ月前の感情や感覚をありありと思い出す事ができます。
また、面白いのは
今年の暑かった夏の思い出を、
その時は聞いていなかった筈のコオロギの声で、
懐かしんだりするというのも不思議でなりません。
こうして、
五感で感じる自然の現象は、
私たちの琴線を刺激する力を持っているようです。
今後も、このような自然の中の微細な変化や感覚を大切にし、
五感で感じることの喜びや心地よさを共有していくことは、
私たちの心を豊かにする鍵となるでしょう。
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