紫外線魔王降臨
僕はこれまで、日焼け=男の勲章ぐらいに考えていた。
夏の男は、真っ黒に日焼けしているものだ!…と、
しかし——それは間違いだった。
日焼けは、火傷だったのだ。
怪我の一種だったのだ。
二日間、炎天下を走り続けた僕の肌は、すでに真っ赤。
いや、真っ赤を通り越して、ヒリヒリと焼けるような痛みがある。
服の袖が擦れるだけで、**「うっ……」**と声が漏れる。
(ヤバい……このままじゃダメだ)
本能的に、日焼けが疲れの大きな原因になっていると感じた。
もう、これ以上焼いたらダメだ!
水筒の水で腕を濡らす。
手の甲がジンジンと痛むので、軍手を水に浸し、はめる。
その瞬間——
「フハハハハッ!!! もう遅いわ!!!貴様の肌を炙り焼きにしてくれるわ!」
天空から響く邪悪な笑い声。
紫外線魔王、降臨——!!
「男の日焼けは勲章じゃ!!旅人の証じゃ!!
それを誇らしく思わず、対策をするとは……!!!」
紫外線魔王
出現場所 夏の日本全国 |
属性・・・悪魔 |
日焼けは男の勲章のように装い、火傷になるような紫外線を浴びせる。神をも凌ぐ最強悪魔。 手下の「乾涸び山姥」「熱波入道」など数多くいる。 |
口癖「ヤケヤケ!」 |

僕は確信した。
紫外線魔王は、「日焼け=カッコいい」という価値観を植え付けることで、夏の男たちを無防備にし焼いてきたのだ。
そして僕も、その罠にはまっていた。
「ダメだ! 日焼けは火傷なんだ!」僕はもう一度自分に言い聞かせた。
灼熱のマグマのように赤黒く、ギラギラと紫外線を当て続ける。
「焼け焼けヤケヤケ〜!」と不敵な声が聞こた。
僕が腕を冷やすためにさらに水をかけると、
魔王は悔しそうに、ギラギラした目を光らせた。
「ぬぅっ!? 余計なことを……!!」
紫外線魔王は激怒し、
さらなる刺客を呼び寄せた——。
乾涸び山姥、参戦
「カサカサ〜……」
どこからともなく、不気味な声が聞こえた。
気づけば、僕の肌は急激に乾燥していた。
腕に巻いていたタオルも、気づけばパリパリに乾いている。
水分を奪われた肌が、ひび割れしそうなほどカサカサになっていた。
「フフフフフ……カサカサ〜」
——そこに立っていたのは、
髪の毛がパサパサに乾ききり、
シワシワの手でこちらを指さす老婆。
乾涸び山姥(ひからびやまんば)——!!
「小僧よ、あたしゃの『カサカサ吐息』には勝てんよ〜」
乾燥の権化、乾涸び山姥が微笑むと、
吹きつける風が、一瞬で僕の肌の潤いを奪っていく。
乾涸び山姥
出現場所 日本全国の乾燥地帯 |
属性・・・妖怪 |
瞬で人をミイラにするほどの乾燥させる力を持つ。宙に漂う浮遊力の持ち主。 |
得意技・・『カサカサ吐息』で旅人の水分を奪う。 口癖「カサカサ!」 オロナインに弱い。 |

「ぐっ……これはまずい!」
僕は急いで、荷物からオロナインを取り出した。
日焼けした肌に塗り込むと、少しだけ痛みが和らいだ。
「おやおや……軟膏なんか塗ったところで、あたしゃの乾燥には敵わんわな〜!」
乾涸び山姥は、カラカラと乾いた笑い声を上げた。
だが、そんな時——
通りがかった地元のおばちゃんが、優しく声をかけてくれた。
「大丈夫? ちゃんと丁寧に塗りなさいね」
まるで「乾涸び山姥対策にはこれが一番よ」とでも言いたげな言葉だった。
(ありがとう、おばちゃん……!)
僕はその言葉に励まされながら、オロナインを丁寧に塗る。
「……チッ!」
乾涸び山姥は舌打ちすると、
カサカサと音を立てながら消えていった。
僕はまたやって来るかもしれない「乾涸び山姥」対策として更に濡らしたタオルで腕を冷やしながら走ることにした。
すると紫外線魔王は
「ぬぅっ!?そのタオル…余計なことを…!」と吠えた。
走り出す僕に、アスファルトの照り返しの熱波が更に襲いかかる。
「熱波入道」のお出ましだ。
「ゴゴゴゴゴ……」
熱波入道
出現場所 日本の熱気が溜まる場所 |
属性・・・妖怪 |
サウナのような熱波で人を襲う。 |
得意技・・・『蒸殺し』 口癖「熱熱蒸し蒸し!」 |

アスファルトの照り返しで、地面が揺らいで見える。
「ワシの熱波を喰らえ!!!熱熱熱ねつ〜!」
空からの陽射し、地面からの熱風。
まるでサウナの中で走っているようだった。
「熱熱熱ねつ〜!水分など、一滴たりとも残さんぞ!!!」
あっという間に、体内の水分が奪われる。
慌てて水を飲み、Tシャツやタオルを濡らした。
しかし、水筒の水はすぐに底をついた。
「ヤバい……」
だが、救いはあった。
国道8号線は国鉄と並走していたため、
駅舎で水を補給することができたのだ。
(助かった……)
まさに、地獄で仏の水だった。
(次ページ:「倶利伽羅峠、そして富山へ」へ続く……!)