旅のタイムカプセル

#3 紫外線魔王と乾涸び山姥の猛攻 (福井〜富山)

倶利伽羅峠、そして富山へ

金沢を出て1時間ほどで、次の峠がやってきた。
倶利伽羅峠(くりからとうげ)——標高110メートル。
ここは源平合戦の舞台でもあり、
「膿川」や「地獄谷」という恐ろしい名前が残っている。

平家の兵士たちが逃げる途中で谷へ転落し、
その死体から血や膿が流れ出したため、そう呼ばれるようになったという。

(悲惨な歴史やな……)

数百年前の戦場を、今は自転車で駆け抜けている。
昔、この場所を駆け回った武士たちの中にも、
僕と同じくらいの年齢の者がいたのかもしれない。

神妙な気持ちになりながら、
午後1時20分、富山県へ突入。

(ついに富山や!)

県境を越えるたびに、
頭の中が江戸時代の旅人気分になっていく。
手形とかスタンプが欲しくなるほどの達成感。

しかし——

小矢部市、高岡市を経て、庄川を渡っている時、
右腕に巻いていたタオルが、いつの間にか無くなっている事に気付いた。

(あれ!?)

「ふはははは! 貴様のタオルは貰ったぞ!!!」
……紫外線魔王め。
やられた。

タオルを探すことも考えたが、
きっと戻るのは「紫外線魔王の思う壺」だろう。
左腕のタオルがの子ていただけでもヨシ!
落とすことを恐れて、また日焼けの痛みもずいぶんマシになっていた僕はタオルをカバンにしまった。

富山ユースホステルは、まさかのバック!?

午後5時、富山駅に到着!
今日も暑かった。
もう、早く宿に入って汗を流してゆっくりしたい。
が——ここで痛恨のミスに気づく。

富山駅周辺にユースホステルがいくつもあると思っていたのだが、
実は、1軒しかなかった。
しかも、10キロ以上先の海沿いにあるのだ。

「……えっ?」

俺海沿いから来たんやけど……。戻れって事?

これはもう**「紫外線魔王」の執念なのか?
いや、もしかしたら
「乾涸び山姥」が道を惑わせた」のかもしれない……!**

いやいや、違う。

ただの僕のミスだった。

「富山ユースホステル」という名前から、勝手に「富山駅の近くにある」と思い込んでいた。暑さで思考力が鈍っていたのだ。

(くそっ……ちゃんと調べておくべきやった……!)

とはいえ、ここで文句を言っても仕方がない。
富山で泊まれる場所はそこしかない。
行くしかないのだ。

魔の15km、終わりなき迷走

「15kmなら、1時間かからんやろ」
そう思っていたが、甘かった。
海沿いの道は入り組んでいて、行き止まりの連続。
地図を見ても、縮尺が大雑把すぎて細かい道が分からない。
あちこち迷いながら、ようやく富山ユースホステルに到着したのは午後6時40分。

1時間40分も掛かった、……疲れた。
とにかく、今は腹が減って仕方ない。
風呂にも入らず、真っ先に夕食を食べに行く。

ご飯を腹いっぱい食べた瞬間、
今度は猛烈な睡魔が襲ってきた。

「もうこのまま布団に倒れ込みたい……」
いや、待て。
風呂に入らず寝たら、絶対に後悔する。

乾涸び山姥との最終決戦! 呪い風呂の儀式

僕はふと考えた。
ここで寝たら、「乾涸び山姥」の呪いで、
朝にはミイラになっているかもしれない。

全身を覆う、汗と塩と疲労のカサカサコーティング。
これを浄化しなければ、明日を生き抜くことはできない。

「このままでは、乾涸び山姥に喰われる……!」

そう思った僕は、
「聖水(風呂)」を浴びに行く決意をした。

ふらふらと風呂場へ向かう。

湯船を前にして、まずは深呼吸。
ここでいきなり飛び込むのは危険だ。
**「カサカサ吐息」**に汚染された肌を、まずは掛け湯で清める必要がある。

慎重に、慎重に……

洗面器にお湯をため、肩へ……
背中へ……
頭へ……

何杯か掛け湯をして、
ゆっくりと汚れを薄めていく。

いきなり湯船に入ったら、
この「カサカサ吐息」と「汗の塩」で、風呂全体が呪われるかもしれない。
慎重に、身体と頭を洗う。
石鹸を手に取るが——
泡立たない。(これが、汚染された身体というものか……!)
それでも、ゴシゴシと擦り、
ついに、全身の垢を下水へと流した。
(ふぅ……ようやく、「乾涸び山姥」の呪いが解けた……)

最後に湯船に浸かる。
湯の中で、僕の肌はようやく柔らかくなっていく。
(ああ……極楽や……)

お清めの代償、忘れ物という罠

すべてを洗い流し、
「紫外線魔王」「乾涸び山姥」「熱波入道」の怨念も消え去った。
心も身体も、完全浄化に成功。

——の、はずだった。

翌日の宿で、あることに気づくまでは。
「あれ? シャンプーと石鹸がない……」

そう。
僕は、脱衣所に風呂道具一式と下着をすべて置き忘れていたのだ。

「パンツもない……」

寝る前の僕は、浄化されすぎて思考停止していたらしい。
そして、忘れ物に気づくのは、翌日の宿で風呂に入ろうとした瞬間。
(え……俺、昨日の風呂で全部忘れてきたんか……!?)

その絶望感は、半端じゃなかった。

再会! まさかのライバルとの再会

部屋に戻ると、見覚えのある青年がいた。

「……えっ?」

僕も驚いたが、相手も驚いていた。
今朝、福井のユースホステルで別れた、あのサイクリストだった。

「やっぱり、ここに来てたか!」

相手は笑いながら言ったが、
次の瞬間、僕の自転車を思い出して驚いた顔になった。

彼の自転車は——21段変速のロードレーサー。

対する僕の自転車は——変速機なしの、いわゆる「お買い物自転車」。

「まさか……ほぼ同じペースで140kmも走ってきたの?」
彼は目を丸くしていた。
そりゃ驚くわな……。

僕の自転車は、本来長距離走るためのものじゃない。
それなのに、ロードレーサーと同じ距離をほぼ同じ時間で走っている。

「すごいな……」

彼はそう言った。

でも、僕には返す言葉がなかった。もう、眠かった。

午後8時、倒れ込むように布団に入った。

16歳の僕と56歳の俺の反省会

16歳の僕
「三日目のこの日はとにかく日焼けが痛すぎて…正直、峠よりもツラかったかもしれません。」

16歳の僕「あと、『紫外線魔王』と『乾涸び山姥』と『熱波入道』の連携がヤバすぎました!」

16歳の僕
「ほんとに…。地獄のコンビネーションでしたよ。
あと、富山のユース、めっちゃ遠かったですね…。15キロ戻るとか地獄でした。」

16歳の僕
「はい!…でも、なんかお清めが厳か過ぎて『真っ白になり過ぎた』気もします…。」

16歳の僕
「え? なんか今、不穏な空気を感じたんですが…?」

と言う訳で、「東日本一周ママチャリ(ミニサイクル)の旅」は三日目も大変でした。

  • あなたは「日焼けで地獄を見た経験」 ってありますか?🔥
  • また、方向音痴でとんでもない遠回りしたことは?

コメントでぜひ教えてください!😊

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