旅のタイムカプセル

#4 親不知子不知を越えてお寺のユース (富山〜柿崎)

恐怖の親不知子不知、そして「怨霊トラック」

午前11時、新潟県に突入。

新潟に入ると、途端に交通量が増えた。
その理由はすぐに分かった。
「朝日」までしかなかった北陸自動車道が、
ここから先はまだ開通しておらず、すべての車が国道8号線に流れ込んできていた。

しかも、この区間の国道8号線は、ほぼ海岸線。
道幅が狭く、アップダウンが多い。
つまり——トラックにとって、自転車は邪魔でしかない。

「ブォォォォン!!」

猛スピードで走るトラックが、
僕の横スレスレをすり抜けていく。
(危ねえ……)

幅寄せしてくるトラックもいて、気が抜けない。
気を張り詰めながら走るのは、肉体よりも精神が削られる。

そして——ついに**「親不知子不知」**に到達。

ここは、日本でも有数の難所。
その名の由来は、**「親が子を、子が親を見捨てざるを得ないほどの厳しい道」**だから。
切り立った崖の上に作られた細い道。
その昔、ここで多くの旅人が命を落としたという。
そして、現代の僕を待ち受けていたのは——

「怨霊トラック」だった。

「ブロロロロ……どけ〜っ……!」

様子がおかしいと感じたのは、
親不知のトンネルに入った瞬間だった。

トンネルの中は日陰なので、普通なら「ちょっと涼しいな」程度のはず。
でも——

「ゾクッ……」

まるで冷蔵庫の中に入ったかのような異様な冷気。
その時、背後から**「ブォォォン!」**と地響きのような音が鳴り響いた。
見ると、一台のトラックが猛然とこちらに迫ってくる!

「……来た!!!」——怨霊トラック。

怨霊トラック

出現場所 親不知子不知
属性・・・亡霊
危険な幅寄せでサイクリストを襲う
口癖「ブロロ〜!退け退け〜!」

何故かは分からない、
しかし確実に僕のような自転車を目の敵にしている。

「ブロロブロロ!退けーっ!ブロロ〜!

僕をやり過ごしたかと思うと、急にぶつかりそうな角度で割って入る。
それって必要?
そして、マフラーから真っ黒な黒煙を吐き出す。
しかも何台も何台も。
トンネルに響く轟音!
それは遥か昔、海に落ちた旅人の叫び声なのか?
それとも日本海の轟音なのか?
僕を恐怖に陥れる怨霊トラックのエンジン音なのか?
僕は全く分からなくなっていった。
ただ、凄まじい爆音が僕の耳をつんざく。

「退けーっ!ブロロ〜!早く退かぬか〜!
「ザブーンザブーン!お前も堕ちろ!海の底……..。」
僕は耳を塞ぎたかった。
とにかく気を確かにもって慎重に道路の端を走った。
少しでもはみ出すと怨霊トラックの餌食になりそうだった。
「大丈夫!大丈夫!」僕は自分を励ましながら必死にペダルを踏んだ。

「ブロロロロロォォォ!!」

轟音とともに、猛スピードで接近!
トラックが僕のすぐ横を駆け抜け、また僕の目の前に割って入る。
心臓が跳ね上がる。
轟音で耳を黒煙で視界を奪われながら
気づけば、僕はすでにトンネルの外にいた。

荒い息を整えながら、ただ立ち尽くす。
背中には、嫌な汗が流れていた。
(……親不知子不知って言うより、命知らずのトンネルと坂道だ、)
弾んだ息を整えながら、僕は小さく呟いた。

親不知子不知を抜けた先、僕の最北「糸魚川

午後12時40分、糸魚川に到着。

長かった……本当に長かった。

親不知子不知では時速8キロという、まるで牛歩のようなスピードでしか進めなかった。
普段は1時間20キロほどのペースを目指しているのに、この激減ぶり。
あまりの過酷さに、時間の進み方までおかしく感じるほどだった。

糸魚川は、僕にとって特別な町だった。
スキーや合宿で何度か訪れたことがあり、思い出も多い。

(ここで少しゆっくりしていきたいな……)

しかし、脳裏に浮かぶのは、先ほどの親不知子不知の地獄の光景。

「いや、休んでる場合じゃない……」

ここでゆっくりしたら、次の直江津までもまた険しい海岸線。
そして、また**「怨霊トラック」の執拗な幅寄せ攻撃**を受けることになるのだ。

それに、僕にとってこの糸魚川は「日本で一番北の場所」だった。
この先へ進めば進むほど、僕は**「自分史上最北の地」**を更新し続けることになる。

「そうだ……僕はまだ見ぬ最果てを目指しているんだ!」

それが、この苦しい旅を続ける理由の一つ。
そう自分に言い聞かせて、僕は先を急ぐことにした。

怨霊トラックとの激闘の果てに

糸魚川から直江津までも海岸沿いの国道8号線が続く。
親不知子不知ほどではないが、やはりアップダウンが厳しい。
しかも、怨霊トラックの「殺人幅寄せ」攻撃が相変わらず続く。

「ブロロロロ……!」
「退け〜! 退け〜〜!!」

(……しつこい!!)

だが、もう怯まない。
僕は怨霊トラックの攻撃パターンを読んだ。

「ここで幅寄せしてくるな……!」
「このトンネルの出口で黒煙を吹くつもりか……!」

まるでボス戦の攻略法を見つけたかのような感覚。
僕はトラックの行動を先読みし、無駄な動きをせず慎重に進む。
こうして、親不知子不知ほどの恐怖を感じることなく、
午後3時過ぎ、ついに上越に到着!

(やった……突破したぞ……!)

次ページ:「るらっ!」の衝撃」へ続く……!

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