恐怖の親不知子不知、そして「怨霊トラック」
午前11時、新潟県に突入。
新潟に入ると、途端に交通量が増えた。
その理由はすぐに分かった。
「朝日」までしかなかった北陸自動車道が、
ここから先はまだ開通しておらず、すべての車が国道8号線に流れ込んできていた。
しかも、この区間の国道8号線は、ほぼ海岸線。
道幅が狭く、アップダウンが多い。
つまり——トラックにとって、自転車は邪魔でしかない。
「ブォォォォン!!」
猛スピードで走るトラックが、
僕の横スレスレをすり抜けていく。
(危ねえ……)
幅寄せしてくるトラックもいて、気が抜けない。
気を張り詰めながら走るのは、肉体よりも精神が削られる。
そして——ついに**「親不知子不知」**に到達。
ここは、日本でも有数の難所。
その名の由来は、**「親が子を、子が親を見捨てざるを得ないほどの厳しい道」**だから。
切り立った崖の上に作られた細い道。
その昔、ここで多くの旅人が命を落としたという。
そして、現代の僕を待ち受けていたのは——
「怨霊トラック」だった。
「ブロロロロ……どけ〜っ……!」
様子がおかしいと感じたのは、
親不知のトンネルに入った瞬間だった。
トンネルの中は日陰なので、普通なら「ちょっと涼しいな」程度のはず。
でも——
「ゾクッ……」
まるで冷蔵庫の中に入ったかのような異様な冷気。
その時、背後から**「ブォォォン!」**と地響きのような音が鳴り響いた。
見ると、一台のトラックが猛然とこちらに迫ってくる!
「……来た!!!」——怨霊トラック。
怨霊トラック
出現場所 親不知子不知 |
属性・・・亡霊 |
危険な幅寄せでサイクリストを襲う |
口癖「ブロロ〜!退け退け〜!」 |

何故かは分からない、
しかし確実に僕のような自転車を目の敵にしている。
「ブロロブロロ!退けーっ!ブロロ〜!」
僕をやり過ごしたかと思うと、急にぶつかりそうな角度で割って入る。
それって必要?
そして、マフラーから真っ黒な黒煙を吐き出す。
しかも何台も何台も。
トンネルに響く轟音!
それは遥か昔、海に落ちた旅人の叫び声なのか?
それとも日本海の轟音なのか?
僕を恐怖に陥れる怨霊トラックのエンジン音なのか?
僕は全く分からなくなっていった。
ただ、凄まじい爆音が僕の耳をつんざく。
「退けーっ!ブロロ〜!早く退かぬか〜!」
「ザブーンザブーン!お前も堕ちろ!海の底……..。」
僕は耳を塞ぎたかった。
とにかく気を確かにもって慎重に道路の端を走った。
少しでもはみ出すと怨霊トラックの餌食になりそうだった。
「大丈夫!大丈夫!」僕は自分を励ましながら必死にペダルを踏んだ。
「ブロロロロロォォォ!!」
轟音とともに、猛スピードで接近!
トラックが僕のすぐ横を駆け抜け、また僕の目の前に割って入る。
心臓が跳ね上がる。
轟音で耳を黒煙で視界を奪われながら
気づけば、僕はすでにトンネルの外にいた。
荒い息を整えながら、ただ立ち尽くす。
背中には、嫌な汗が流れていた。
(……親不知子不知って言うより、命知らずのトンネルと坂道だ、)
弾んだ息を整えながら、僕は小さく呟いた。
親不知子不知を抜けた先、僕の最北「糸魚川」
午後12時40分、糸魚川に到着。
長かった……本当に長かった。
親不知子不知では時速8キロという、まるで牛歩のようなスピードでしか進めなかった。
普段は1時間20キロほどのペースを目指しているのに、この激減ぶり。
あまりの過酷さに、時間の進み方までおかしく感じるほどだった。
糸魚川は、僕にとって特別な町だった。
スキーや合宿で何度か訪れたことがあり、思い出も多い。
(ここで少しゆっくりしていきたいな……)
しかし、脳裏に浮かぶのは、先ほどの親不知子不知の地獄の光景。
「いや、休んでる場合じゃない……」
ここでゆっくりしたら、次の直江津までもまた険しい海岸線。
そして、また**「怨霊トラック」の執拗な幅寄せ攻撃**を受けることになるのだ。
それに、僕にとってこの糸魚川は「日本で一番北の場所」だった。
この先へ進めば進むほど、僕は**「自分史上最北の地」**を更新し続けることになる。
「そうだ……僕はまだ見ぬ最果てを目指しているんだ!」
それが、この苦しい旅を続ける理由の一つ。
そう自分に言い聞かせて、僕は先を急ぐことにした。
怨霊トラックとの激闘の果てに
糸魚川から直江津までも海岸沿いの国道8号線が続く。
親不知子不知ほどではないが、やはりアップダウンが厳しい。
しかも、怨霊トラックの「殺人幅寄せ」攻撃が相変わらず続く。
「ブロロロロ……!」
「退け〜! 退け〜〜!!」
(……しつこい!!)
だが、もう怯まない。
僕は怨霊トラックの攻撃パターンを読んだ。
「ここで幅寄せしてくるな……!」
「このトンネルの出口で黒煙を吹くつもりか……!」
まるでボス戦の攻略法を見つけたかのような感覚。
僕はトラックの行動を先読みし、無駄な動きをせず慎重に進む。
こうして、親不知子不知ほどの恐怖を感じることなく、
午後3時過ぎ、ついに上越に到着!
(やった……突破したぞ……!)
(次ページ:「るらっ!」の衝撃」へ続く……!)