1985年7月31日 出家朝食
昨夜は旅人たちと深夜まで語り合い、寝るのが遅くなった。
おかげで朝は布団からなかなか出られない。
でも「るらっるらっ女」に朝食で急かされるのはもう勘弁だ。
「エイッ!」
気合を入れて布団を蹴飛ばし、顔を洗って歯を磨き、食堂へ向かう。
案の定、食堂には昨日と変わらぬ光景が広がっていた。
「るらっるらっ女」たちは相変わらず、全員が同じリズムで動いている。
(うわぁ怖い……でも、もう慣れた!)
ところが、目の前に置かれた朝食を見た瞬間、言葉を失った。
「飯、のり、具なし味噌汁。以上。」
お寺のユースということを大義名分にに恐ろしく手を抜いたメニュー?
えっ? これだけ? これ、食事?
「俺ら、普通に宿の客なのにね……」
昨日のライダーがポツリと呟く。
「……ピタッ!!!」
「るらっるらっ女」たちの動きが一斉に止まる。
……やばい。
場が凍りついた。
いや、凍りついたのは僕らだけで、「るらっるらっ女」は目を見開いたまま静止している。
「る……らっ……?」
誰かが笑いを堪えきれずに吹き出した。
すると、堰を切ったように笑いが広がる。
「はははは!」
「いや、これは修行だわ!」
「具なし味噌汁って!」
僕らの笑いの波動が、「るらっるらっ女」の妖気を完全に吹き飛ばした。
陽が高くなって「るらっるらっ女」の怪しいパワーも弱まっているようだ。
諦めたように彼女たちは再び機械的な動きを再開する。
(勝った……!)
朝食を食べ終え、ようやく呪縛から解放された僕らは、ゆっくりと食後の余韻を楽しんだ。
こうして「るらっるらっ女」に別れを告げ、8時20分、妙智寺ユースホステルを後にした。
「さぁ、新潟を目指すぞ!」
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