旅のタイムカプセル

#5 日和山般若の恐怖─そして守護神欽ちゃん布団(柿崎〜新潟)

銀行難民 〜 俺のお金、どこでおろせる?

朝食を終え、妙智寺ユースを出発してしばらく走ったところで、ふと気づいた。

(あれ? 俺、あといくら持ってたっけ?)

財布を取り出して確認する。

「……3,000円。」

(やばい、今夜の宿代と飯代で終わるやん……!)

焦りを感じつつ、柿崎という街に入ったところで、銀行を見つけた。
「よし、ここでお金を下ろそう!」

颯爽とATMにカードを突っ込む。

「こちらのカードはご利用できねーがや。」

(えっ?)

まるで「あっかんベー」と言わんばかりに、ATMはカードを吐き出した。
もう一枚のカードを入れる。

「ご利用できねーがや。」

(なんで!?)

訳が分からず、窓口へ。
すると銀行員が申し訳なさそうに説明してくれた。

「都市銀行のカードは、地方銀行では使えないがや〜。」

(都市銀行……地方銀行……? そんな区別あったんか!?)

要するに、僕が持ってきた大和銀行と住友銀行のカードは「都市銀行」専用。
ここは北陸銀行。地方銀行だから、使えないと言うのだ。

(初耳! 俺、終わった……)

今日の食事代どころか、今夜の宿代すら危うい。
こうして僕の旅は、**「都市銀行を探す旅」**へと変わった。

どこに行けば「都市銀行」はあるのか?

16歳の僕には、「都市銀行」の定義が分からない。
「都市って、どのレベルから都市なん?」

柿崎の次に大きな街は柏崎。
地図を見ても、柿崎よりは栄えていそうだ。

「よし、とにかく柏崎に行って探そう!」

必死に銀行の看板を探しながら進む。
しかし、どこまで行っても「北陸銀行」「第四銀行」「越後銀行」ばかり。

(いや、そうじゃなくて……俺が求めてるのは、もっとこう……東京にありそうなやつ!)

そして、ようやく柏崎駅に到着。
ここならさすがにあるはず!

「すみません、都市銀行ってどこかにありますか?」

近くにいたおじさんに尋ねる。

おじさんは、布袋様のように福々しい顔でニッコリ笑い、
「あぁ、あすこにあったろも!」

(やった!!)

さらに、おじさんはわざわざ案内してくれるという。
僕は希望を胸に、おじさんの後を自転車を押しながらついて行った。

連れて行かれたのは「ダメな銀行」だった。

曲がり角をいくつか抜け、ついに銀行の看板が見えた。

……そこには、堂々と書かれていた。

「北陸銀行」

(あっ……これ……ダメな銀行やん。)

絶望する僕をよそに、おじさんは満面の笑みで、
「ほれ、ここら!」と誇らしげに指差した。
(いや、違うんです布袋さん……! 俺が探してるのは、そうじゃなくて……!)

導きの布袋

出現場所 柏崎市街
属性・・・神
特技・・・癒しの笑顔で道案内。時々間違うのが玉に瑕。
口癖・・・「あぁ、あすこにあったろも!」「ほれ、ここら!」

でも、おじさんの顔を見ると、とても「ここじゃないです」と言えない。
わざわざ時間を割いて案内してくれたのだ。

(……これはもう、入るしかない。)

僕は何も言わず、ATMの列に加わった。
ガラスの向こうで布袋さんは満足そうに頷いている。

(すみません、本当はここじゃダメなんです……でも、ありがとうございました。)

心の中で感謝しながら、深々と頭を下げた。

おじさんが去ったのを確認して、そっと列を抜ける。

残る希望は、新潟。

柏崎で「都市銀行」は見つからなかった。
となると、次の都市は……新潟しかない。

新潟までは、約90km
今の時刻は午前10時
銀行の営業時間は午後6時まで

「絶対に間に合わないとヤバい……!」

唯一の希望は、新潟が新幹線のある街だということ。

「新幹線があるってことは、それなりに都会なはず……!」
「まさか、新幹線が止まる街に都市銀行がないなんてことは……」

(いや、ない! ないはずだ!)

僕は決意した。
午後6時までに、何が何でも新潟に到着する。

「銀行が俺を待っている!!!」

次ページ:「海沿いルートで新潟を目指す!」へ続く……!

1 2 3 4 5