旅のタイムカプセル

#9 さらば本州!北海道上陸と”イクサンダー大沼”の夜

まるでプロの演芸「イクサンダー大沼の大人気ミーティング」

「さぁ始まりました!北海道の夏!今年もやってきました関西人まみれの北海道の季節!」

ギターを抱えた二人組が、ユースホステルのミーティングの場で軽快に語り始める。

「『ハエとカラスと関西人』いう言葉があるくらいやからねぇー、
もうそろそろ夏の北海道は『大阪弁』を公用語にしたらええんちゃう?」

「せやなぁ、道庁の前に“標準語禁止”の看板立てよか〜!」

会場、大爆笑。

僕も、気づけば声を上げて笑っていた。

やっぱり多い、大阪人

「関西から来た人、手を挙げてー!」

すると、全体の3分の2ほどの人が手を挙げる。

「じゃあ、大阪の人?」

そこからさらに3分の2くらいの手が残った。

つまり、宿泊者の半分近くが大阪人。

「なんでやろなぁ~、大阪人って北海道好きよねぇ」

「ほやな、これからは“ハエとカラスと大阪人”やな!」

「大阪人、ハエとカラスと並んでるんやね……」

「共通点は?」

「黒い?」

「いや、それ大阪人に失礼やろ!!」

またまた大爆笑。

どうやら、ギターを弾いている二人も大阪出身らしい。
こういう自虐ネタが堂々とウケるのも、大阪ならでは。

大阪では「アホ」が最上級の褒め言葉になることもあるからだ。

やっぱり間違われる、イクサンダー

話題はユースホステルの名前へ。

「ところでみんな、この宿の名前間違えたやろ?」

「“アレクサンダー大沼”やないで! “イクサンダー”やで!」

案の定、会場は爆笑の渦。

どうやらほとんどの人が、道を尋ねる際に「アレクサンダー」と言ってしまったらしい。

僕だけじゃなかったことに、なんだかホッとする。

プロレベルの紙芝居

さらに、ミーティングは紙芝居へと移る。

しかし、ただの紙芝居ではない。

ドアが開く音、ノックする音、風の音まで、ギターを使って表現するという演出付きだ。

「これ、プロの演芸やん……!」

ヘルパー(ユースホステルの従業員)として働く彼らだが、ここまでの完成度とは驚きだった。

最後は「岬めぐり」をはじめとした歌をみんなで歌う流れに。

こういう合唱、正直苦手なんだよな……

と思いつつも、周囲の空気に流される。

気づけば、肩を組んで歌う人たちまでいる。

中には、涙ぐむ者までいた。

何かを思い出しているのか、それとも何かに謝っているのか……

いや、単に酒が回ってるだけかもしれない。

誰もが、この**「一夜限りのミーティング」** を全力で楽しんでいた。

午後9時、お開きとなる。

函館山の夜景 vs 眠気

部屋に戻り、地図を広げて翌日のルートを考えていると、数人のライダーたちがワイワイと盛り上がっていた。

「函館山の夜景、見に行こうぜ!」

「後ろに乗せてやるから、お前も行かへん?」

誘われた。

バイクの後ろに乗せてもらって、函館の夜景――。

めちゃくちゃ魅力的な提案だ。

「でも、ダメだ……眠すぎる……」

少し前まで体調も崩していたし、せっかく回復してきたところで無理はしたくなかった。

「ごめん、今日はゆっくりしときます!」

ライダーたちが部屋を出て行くと、辺りは一気に静かになった。

僕はそのまま横になり、知らぬ間に眠りについていた。

工事現場級の二重奏

「グゴーッ! ギギーッ!」

突如響く、爆音。

え、何!? 工事現場!?
アスファルトでも削ってるのか!?

起きたのは僕だけじゃなかった。
「何ーこれ〜」と、ボソボソ確認しあう声があちこちで漏れる。

そう、我々は出くわしてしまったのだ。
この夜、ユースホステルの大部屋に降り立った眠りの鬼――

眠鬼音丸

出現場所 イクサンダー大沼ユース
属性・・・鬼
イビキは雷鳴、歯ぎしりはチェーンソー。しかも同時に繰り出す、騒音界の二刀流。
大部屋で多くの旅人の安眠をズタズタに引き裂く

誰かがボソリとつぶやいた。
「これ、一人の音やんな……?」

音丸、全力演奏中である。

あまりの爆音に、何人かの宿泊者が布団を抱えて起き上がる。
まるで討伐隊のように、そっと音丸のもとへ集まり、

ズドンッ!

布団と枕で包囲・制圧。
音丸、バタバタと暴れる。

笑いを堪えながら様子を見ていた僕は、
「大丈夫か?怒らへんか?」と一瞬ヒヤリ。

……が、そのまま彼は静かになり、
やがて、**「フー……」**というため息だけが部屋に響いた。

もしかしたら、寝ている時だけ鬼化して、
目を覚ますと大人しい人間なのかも知れない――。

以後、爆音が鳴り響くことはなかった。

いや、もしかしたら音丸は、あのあとずっと……眠れなかったのかもしれない。

反省会(16歳の僕と56歳の俺)

16歳の僕
「いや、”日和山ユース”の牙城は崩せなかったよ……。でも強制起床5時はマジでキツかった。」

16歳の僕
「まぁ、でも青森までたった40キロやったから、そのおかげでフェリーで寝られた。」

16歳の僕
「マジでショボい固定方法やったな。フェリーの中で俺の自転車だけ、申し訳程度の荒縄って……。」

16歳の僕
「そして北海道上陸!!いやぁ、感慨深かった……。」

16歳の僕
「うん……一瞬、函館に留まろうかとも思ったけど、”約束したこと”と”実際に会えること”は別やなって思った。」

16歳の僕
「”約束の地に行った”ってことで十分やって思えたんだよね。」

16歳の僕
「えっ?そうなん? ところで、”イクサンダー大沼”のミーティング!あれはすごかった!」

16歳の僕
「ギターの人たち、話もうまいし、紙芝居も面白かったし……。」

16歳の僕
「いや、マジで工事現場レベルのイビキと歯ぎしりやった……。みんなで押さえ込んでたし……。」

16歳の僕
「うん。たぶん、寝たら鬼になるけど、起きたら人間なんちゃうかな。」

16歳の僕
「うん。でも、北海道一発目のユースは、最高に面白かったよ。」

  • あなたは忘れられない船旅の経験はありますか?
  • あなたは旅先で鬼イビキや鬼歯ぎしりで苦労した思い出はありますか?

コメントでぜひ教えてください!😊

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


1 2 3 4 5 6